第三章 交際を扱う言語社会学:ミクロとマクロ

 言語社会学は,言葉の交際における変異の社会的パターン化に焦点を当てる。使われる言語変種は,ことば行為とことば事件の種類によって異なる。この問題を明確にするためには,エティックではなく,エミックという分析方法をとるべきである。

 社会言語学にはミクロレベルとマクロレベルという二つの分析方法が存在する。ミクロレベルの分析は高度な環境的で複雑な分析であり,マクロレベルの分析は社会的な過程と体系に重点を置いている。また,言語社会学における言語転換には比喩的転換と情況的転換の二種類がある。比喩的転換は強調もしくは対照のために行われ,情況的転換は,交際を通じてことば使用が広まった規範的見方と規則によって支配されている。

 ミクロレベルの分析方法は,役割関係と社会情況を用いて変異の社会的パターン化を解明する。それに対してマクロレベルの分析方法は,領域を用いて変種と社会的に認められている機能との間に存在する規則性を明らかにする。領域と社会的情況は,ミクロレベルの言語社会学とマクロレベルの言語社会学の間にある結びつきを示している。

 ミクロ言語社会学のデータには不十分な部分があるため,社会的言語的規範の見解や主張に基づく研究を見る必要がある。それらの研究は,社会情況的な要因の相対的重要性と,それぞれの領域において要求される言語使用に影響を与える要因に焦点を当てている。本章は,グリーンフィールド(1968)の仮説とイーデルマン(1968)の研究をあげている。それらの研究は,様々な領域およびそれぞれの領域における妥当な言語使用が,無数の互いに区別された情況とそれらの情況が示す変化と不変化のデータから発見されなければならないことを指摘している。

 言語社会学的記述にはいくつかのレベルと接近方法があり,またそれぞれの内部には,多数の言語学的,社会心理学的,社会学的仮構がある。様々な問題と目的に対して,同一の分析方法では不十分であり,問題によって適切な方法を選択することで,社会研究の品質を科学的に保証することができる。また,ミクロな仮構と方法,マクロな仮構と方法の間には連関が存在しており,概念的にも方法論的にも補い合っている。(OG)