序論&2章

1.序論
言語社会学は,主に二つの下位領域より構成されている。その一つは記述的言語社会学であり,もう一つは動的言語社会学である。記述的言語社会学の関心は「誰が何の言語(あるいは言語変種)をいつ,誰に,何の目的で話す(書く)のか」にあり,言葉共同体で可視化されている言葉レパートリーにおける言語的あるいは機能的特徴を明らかにすることにある。一方,動的言語社会学の関心は「特定の場面における言語仕様と言語に対する態度の様々な変容状態において,人間の言語使用の社会的側面と言語に対する態度は,なぜ,またはどのように差異が見られるのか」にあり,言語変種の使用者が他の言語ネットワークと接触する際,どのように自らの言語レパートリーを調整していくのかにある。

2.言語社会学の若干の基礎的概念
 言語社会学においては,「言語」ではなく「言語変種」が主な分析枠組である。言語変種に対する態度と行動は,四つのタイプ,すなわち標準化,自律性,史的根拠性または活力に分類される。言語変種を共有する集まりを言葉共同体という。しかしこれはその構成員が同じ言語変種を使用するためではなく,コミュニケーション活動と象徴の共有によって定義されるのだ。一般的に,現代の言葉共同体には一言語のさまざまな言語変種の流通する場合が多いのに対し,伝統的な言葉共同体には複数の言語が流通する場合が多い。(HC)