死滅した言語、あるいは瀕死の言語の再生したケースがいくつか確認されている。本章では、まず地域言語の再生についての例があげられている。これは、コーンウォール語スコットランドゲール語イディッシュ語である。コーンウォール語は粘り強く生き残るが、16世紀の宗教改革の犠牲となり、その時代から衰退の道へと入った。19世紀頃になると、ほぼ完全に消滅した。しかし、1861年にドイツの文人コーンウォール語でいくつかの詩を書いた。1901年に設立されたコーンウォール語研究学会は、コーンウォール語復興に貢献した。第一次世界大戦の後、二人の情熱家が中期コーンウォール語を基礎にして文法を編み、時代に合った語彙をつくりあげた。今日では、少なくとも1000人から1500人の者がコーンウォール語を話すことができる。スコットランドゲール語は、もっとも衰退が進んだケルト語と考えられたが、1980年代以降、一種の言語ルネサンスが胎動し始めていた。イディッシュ語は、日常生活において幅広く用いられる普通の話しことばの地位に復帰したわけではない。それでも、イディッシュ語に真の生命を取り戻させようと意思は存在した。

 次に、言語の誕生、ヨーロッパ語とクレオール語を例として論ずる。ヨーロッパ語の例の一つは、現代ノルウェー語である。ノルウェー語にはデンマーク語のおびただしい要素が浸透しているため、愛国精神にあふれる政治家や文学者たちは、それまでの支配階級のデンマークノルウェー語とは異なる、本物のノルウェー語を生み出すべきだと主張した。これが現代ノルウェー語の洗礼である。クレオール語は、言語の死滅に抵抗する人間の闘争のあらわれである。19世紀と20世紀には、古典的な意味でのクレオール語とはかなり異なる状況で、新たなクレオール語がいくつも誕生した。

 最後に、再生の要因としての言語育成政策について述べ、クロアチア語が例として挙げられた。クロアチアが独立国家に昇格したことの必然的な結果としてクロアチア語が必要となり、その育成政策によって、ヨーロッパにはもうひとつ言語が付け加えられた。(ZJ)