『ことばの経済学』 第1章 言語は富である−経済発展における言語と貨幣−

 第1章 言語は富である−経済発展における言語と貨幣−

本章ではまず、多言語性と社会的な豊かさとの関係が論じられた。工業国および発展途上国の一人当たり収入と言語数の比較から、言語的にきわめて不均質な国はつねに低開発国であることが指摘された。そして言語の豊かさと経済的貧困の相関関係の背景には、労働を神聖化する「プロテスタントの倫理」があり、その普及には共通言語によって書かれた福音や印刷技術の発展が大きく寄与していることが述べられた。16世紀以来成立したヨーロッパの諸共通語は社会統合の質的に新たな手段であり、この手段が経済発展に対応し、それを決定的に推進した。そして社会の発展の要因として言語と貨幣が手段として共通した性質を持つことが指摘された。

 また筆者は、書きことばが言語発展ならびにその他の社会的発展をも促進したことに言及し、言語の領域における西欧化なしでは現代のコミュニケーションのある種の形態は不可能述べている。本章の最後では、一つの社会にとって言語は、共通語と共有している特徴が多ければ多いほど、ますます価値のあるものであるとしている。(RM)

ことばの経済学

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